社会生活のコンクリートパイル

思えば現在の園舎群が建設されて19年目、譲葉舎に至っては20年目に入る。はた目にも外観はそんなに年月がたっているよう見えないし、内部もまだまだ健在である。建物の土台には長さ10メートル、直径30センチほどの電柱のようなコンクリートパイルが数十本も打ち込んであり、それが一つひとつの建物の根底をがっしりと支えている。 それほどに土台の工事は重要であるが、なかなか見えないところの仕事だけに評価されにくく、忘れ去られがちである。 土台工事を担当された方々もその建物の竣工時にはどこか他の場所で工事していたりして、自分たちが担当した土台がどのような建物を支えているのか晴れの姿を見ることも少ないのではないか。 私たちの養育の仕事も似ているところがある。私たちのもとに来る子どもたちはまだ人生の土台作りの時期にある。一本また一本と土台のコンクリートパイルを打ち込む仕事。上屋の重さを支えるのに必要な場所を決定し、狙いを定めてパイルを打ち込む。単なるコンクリートが重要なコンクリートになる瞬間である。 子どもとの平凡な生活の中で、人間信頼とか人を大事にするとか約束を守り社会の約束事を大事にするという、コンクリートパイルを打ち込む。それは子どもと大人の共同作業、地味で忍耐のいる作業。しかしこの作業なしにいくらその子の上に目に見える成果としての建築をしても、そのうちに倒壊(挫折)する。そしていつの間にか子どもたちは成長し社会に出ていく。 良い土台が形成されていたかはその時にわかる。その成果を見ることはなかなかない。たまに訪れてくれる卒園生を見て、とりわけ大成功した人物ではなくても普通の社会人になっていてくれたことを私はとても誇りに思う。土台作りは間違っていなかった、と。

  この一年もいろいろなことがあった。特に気になることは子どもたちの安全で安心できる環境を如何に作り、保っていくかということである。