東京都では2012年度4月1日より全国に先がけ「自立支援強化事業」を開始した。本事業は、児童養護施設に入所している児童の自立に向けた施設入所中の支援や、施設退所後のアフターケアを手厚く行なう体制を整備し、児童の社会的自立の促進を図ることを目的として開始された。
  学園では2013年4月1日より「自立支援コーディネーター」を配置した。自立支援コーディネーターの業務内容は以下の通りである。
(1) 自立支援計画書作成への助言及び進行管理
(2) 児童の学習・進学支援、就労支援等に関する社会資源との連携、他施設や関係機関との連携
(3) 高校中退者など個別対応が必要な児童に対する生活支援、再進学又は就労支援等
(4) 施設退所者に対する継続的な状況把握及び援助
  上記の内容の実施及び施設における自立支援のマネイジメントを行なう。
  学園では各園舎の寮長を中心に担当職員がキーパーソンとなって、卒園生をアフターケアしている。職員の異動や退職等もあるので、自立支援コーディネーターがフォローケアにあたることになる。新体制にコーディネーター自身も職員も当初は戸惑い、多少混乱したが、実施したばかりなので、東京都も他の施設の方々も同じようにコーディネーターのあり方を模索している状況であった。自立支援コーディネーター研修、リービングケア委員会等の研修・グループディスカッション・施設見学会等を通して支援の標準化、多様な資源の把握と発展促進、ネットワーク形成とケアマネイジメントについて都内の施設全体での情報共有など、資質向上を図れたことには大変意義があった。
  卒園生も、日々の業務に追われる現場の職員に些細な相談をもちかけるのにためらいを感じ、卒業して数年たつと遠慮も出てきたりするが、卒園生担当の職員がいると、現場の職員以外にも連絡できるのだという安心材料の一つになったようである。しかし、それと同時に、担当園舎の職員とこれまでに築いてきた愛着・信頼関係は、非常に価値あるものだったとあらためて感じた一年であった。

・A君
念願叶って、夢であった消防士になれたA君はうれしそうに「彼女ができました!」と学園に連絡をしてきていたのだが、めでたく結婚をすることとなった。式場を探す中で、やはり学園の聖堂で式を行ないたいと思ったようで、在園時代に担当職員だった神父が大分県から駆けつけ、結婚式をとり行なった。準備等も学園職員が奔走し、アットホームな式となった。A君の最後のあいさつで「小さい頃に育った自分の家を妻に見せて、ここで式を挙げたいと思いました」との言葉には胸が熱くなった。ふたりの今後の幸せを切に願いたい。

・B君
福祉施設で働くB君より結婚の報告。在園時の担当職員に報告がはいった。御世話になったのでできれば式に出席してほしいとのこと。喜んで3人で出席した。B君より出席職員の肩書をどのように紹介すればいいか問い合わせがあり、「こちら側はどう書いてもいいけど、いろいろな人がくるから施設出身とあえて公表しなくてもいいし、どのように書いてくれても私たちはかまわないよ」と伝える。お相手の御両親も大変温かい方のようで安心した。B君の新生活をこころより祝福したい。

・C君 
年賀のあいさつに園長と職員を訪ねてきた。園長には 「開運」という名前の日本酒をプレゼントしてくれる。驚いて御礼を伝えると「10年近くも御世話になったのだから当然です」とのこと。C君の心底当然だと思ってやってくれている心遣いがとてもうれしかった。

・D君 
当初、一人暮らしをすることさえも不安だったD君だったが、精一杯がんばって専門学校にも通った。途中体調を崩し、不登校気味になったが専門学校の担当の先生が懇切丁寧にフォローして下さり、復帰することができた。専門学校でもここまで面倒を見て下さるのかと驚いた。学校の先生と協働して今後も卒業までサポートを継続していきたい。

    上記はほんの一例で、他にも結婚の報告は多かった。「ガスを消し忘れたかもしれないから見てきて」 「車検が今日切れるんだけど、どうすればいい?」等小さなことから大きなことまで、園舎の職員は目の前の子どもたちに翻弄されながらも、卒園生のことを本当に温かくサポートしてくれている。
  又、「学園の食事はおいしかった」「学園の味を思い出してカニクリームコロッケを作ってみた」「いかに恵まれていたか、出てはじめてわかった。甘えてた。今更遅いけど本当に感謝しています」等、心底御礼の気持ちを伝えてくれる子どもたちがとても多いのは大きな励みである。突然、「昔はいろいろと迷惑をかけてごめんなさい。反省してます。見捨てないでくれてありがとうございました。本当に御世話になりました」と謝罪しつつ立派に成長した元気な声を聞かせてくれることもある。就職や転職、結婚等の人生の節目に自ら連絡をくれる子どもたちの心持ちを今後も大切に受けとめたい。
  私たちの仕事は一朝一夕で成果が出るものでもなく、正解もない。学園にいる間に大人たちの想いが伝わらなくとも、いつの日か伝わることを信じ、わずかでも彼らの成長の一助になれたらと願う。卒園生の健康と幸せ、活躍を心から祈りつつ、今後もサポートを続けていきたい。
 
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