これからの学園
昨年平成28年10月23日、学園の70周年をお祝いした。卒園生や元職員を含め250名を越える多くのかたがたにおこしいただいた。卒園生の矢野ブラザーズの3人は素敵な歌とパフォーマンスを披露してくれ、大いに祝賀ムードを盛り上げてくれた。在園生も深い感銘を受けたことだろう。ご参列いただいたみなさまにはこころから感謝したい。
  いまだに児童養護の世界は残念ながら未成熟な部分を残している。小さな子どもたちへの虐待は後を絶たないし、被害者である子どもたちへのフォローがまだまだ手薄なのだ。児童相談所の一時保護所はいつも定員オーバー状態で、子どもたちへの対応にも多くの問題が山積しているといわれている。親の不適切な対応から引き離された子どもたちが、一時保護所において適切な処遇を受けられないとなれば、いったいどこに彼らの安住の地があるのだろうか。
  最近ようやく施設職員の配置増がきめられ、夜間対応などの職員処遇も認められてきた。徐々に児童養護施設の社会的役割が認識されてきたといってもいい。しかし子どもたちの貧困は依然として世界的な問題であり、行方不明の子どもたちも少なからず存在する。人は問題が整理され対策が制度化されると、すべて解決して、あとはもううまくいくと考えがちであるが、その制度にさえも乗れない人たちがいることを忘れてはならない。
  東京サレジオ学園の設立母体であるカトリックサレジオ修道会日本管区はその方針を「より困難な状況にいる青少年にむかうこと」とする。つまり制度が充実し安泰であることに満足することなく、より困難な、制度の枠からはずれてしまった子どもたちへ向けて手を差しのばすべきであるとしている。
  学園はいま移転改築後30年を過ぎ、国と東京都の施策に対応して小規模化・家庭的養護の実現のための定員削減、さらに譲葉舎を地域子育て支援に向けて活用すべく計画中である。こうした中で生かされるべきは先人たちのフロンティア精神ではないかと思う。70数年前、サレジオ修道会のタシナリ神父は戦後日本の子どもたちの過酷な状況に触れ、すぐさま行動を起こした。その熱意は周りの人たちの心を動かし、多くの人たちの協力によって東京サレジオ学園が設立された。
  今それと同じ情熱が私たちにあるのかどうかが試されている。当時と違うのは制度の外にはじき出された子どもたちが、どこにどのようにしているのかが見えにくいことだ。それを知るには子どもたちに寄り添う敏感な心のアンテナが必要だ。つねに子どもたちの現場に身を置かなければ見落としてしまう。
  先日、健康診断で医師から「もう立派なご老人ですよ」と言われてしまった。内心ほっとしたと同時に少し寂しくもある。しかし学園に戻るとそんなことも言っていられない。若いエネルギーに満ちみちた子どもたちに囲まれながら、まだまだやるべき魂の仕事がわたしたちには残されている。 
  「おまえの青春の日々に、お前の造り主を心に刻め」(コヘレト12章)
 
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